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番外編 没有 下次了 啊!
「没有 下次了 啊(メイ ヨ シャ ツ ラ ア)
もう次はないからね。だって」
「肝に銘じます」
肩を丸め小さくなる玲士さん。
「玲士も亜優の前ではただの男だな」
絣の着流しを粋に着こなし、ゲラゲラと笑いながら度会さんが姿を見せた。
「ご無沙汰しております」
慌てて姿勢をただす玲士さん。
「久し振りだな。元気そうでなにより。コウジも元気なんだろ?」
「はい。挨拶に来るように言ってはあります」
「そうか」
「玲士、卯月と亜優を頼むな」
「卯月さんに誠心誠意尽くします。お任せください」
玲士さんの表情がキリリと引き締まった。
ー空吹く風と聞き流しやがったー
「そうか」
コウジさんから掛かってきた電話にそれまでおちゃらけていた玲士さんの顔つきががらりと変わった。
彼から聞いた話しでは、コウジさんは半グレグループを二十歳そこらで立ち上げて解散に追い込まれるまで約八年間幹部として組織をまとめた。その手腕を買われりょうお兄ちゃんに拾われたみたいだった。玲士さんとは兄弟分だ。
「区役所勤務だった男が今やヤクザだ。シノギを稼ぐためならなんでもするようになった」
「あなたくらいの逸材なら縣一家の幹部にすぐになれるのに」
「棒に振って勿体ないってだろ?俺は出世にあまり興味はない。今を楽しく生きたほうがいいだろ?」
「ポジティブな方ですね」
「みんなによく言われる。ただ単に能天気なだけかも知れないがな」
亜優さんが隠れていた橘さんの背中からようやく出てきた。
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