3037 / 3560
番外編弓削さんからの手紙
「信じるか信じないか姐さん次第だけど、幽霊が出るっていう噂があって誰も借り手がなかったんだ。震災で自宅が全壊して、それで十年くらい前からあのビルの一室を借りて美容室をはじめたみたいだよ。奥は簡易的なキッチンと2ドアの冷蔵庫があるだけで別に変なところはなかったと思うだけど……」
久弥さんが間取りをじっと見つめた。
「これを見ると奥にもう一つ部屋があるよね。入口なんてどこにもなかったと思うけど、気付かなかっただけかな」
「隠し部屋の可能性は?」
柚原さんが久弥さんにペットボトルのお茶を渡した。
「暑いんだ。わざわざ来なくてもいいのに」
「姐さんからの呼び出しを無視したら兄ちゃんに怒られます」
「そうか」
森崎さんがぶすっとして柱の影からこっちを見ていた。
「柚原さん隠し部屋って」
「藍子も希実もあやみもみんな成仏できずにまだそこらへんをうすらかすらしている。その幽霊も訴えたいことがあるから成仏できずに姿を見せているんじゃないか?弓削の話しだと義夫は若いころは日本人離れしたスタイルと甘いルックスでモテモテだった。客の女としょっちゅう浮気をしていた。ハツの目を盗み女を二階の自宅に連れ込んでいた。警察沙汰になる修羅場が何度もあった」
「娘が行方不明になっていてもそんなに騒がなかったのは、もしかしたら……」
「そうだ。これで確定だ」
ともだちにシェアしよう!