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番外編新たな波乱の予感
「いいか渋川。舎弟はみんな俺と未知の息子みたいなものだ。生半可な気持ちで付き合って貰っては困る。一生涯愛して、守り抜いて、決して泣かせないと口約束でなく誓約書を書いてもらわないとな」
「やっぱり兄貴は兄貴だな。だからみんな兄貴に心底惚れている。もちろんこの俺も兄貴が大好きだ」
渋川さんが信孝さんに気付き右手を挙げた。
「信孝、久し振りだな。カミさんほっといていいのか?」
「ナオは橘さんと亜優さんと一緒にいるから心配ない。来るなんて一言も聞いていない。渋川、オヤジにねっぱるな。離れろ」
信孝さんが二人の間に無理矢理割り込んだ。
「兄貴、復讐する相手を殺さずにサツに突きだすにはどうしたらいい?」
「もしかして見付けたのか?」
「玲士が美容室に行ってくれたお陰でヤツが俺と佐治の親を殺した犯人だという確信が持てた。今は状況証拠しかないが、動かぬ証拠を見付けてヤツを殺人罪で告発する」
「そうか。ここまで長かったな」
「あぁ。親が殺されて十六年、すごく長かった。兄貴、信孝、悪いがこのことは佐治にはまだ言わないでくれ。佐治のことだ。ヤツをぶっ殺すかもしれないから」
「分かってるよ」
「分かった」
「ヤツはまだ気付いていない。渋川、あと少しの辛抱だ。油断するなよ」
「オヤジの言う通りだ」
彼も信孝さんもヤツが誰かすぐにぴんと来たみたいだった。
「俺も佐治も生まれは東京だ。佐治は弓削に拾われて福島に来たんだ。未知も知っている通り兄貴も弓削も昔からいろんなものを拾ってくることで有名だった。俺は兄貴に拾われ、宇賀神に跡目候補として育ててもらった。兄貴は命の恩人だ」
渋川さんがふと空を見上げた。
「吸い込まれそうな青い空だな。空を見上げるなんていつくらい振りだろう」
渋川さんが感慨深そうにじっと見つめた。
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