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番外編自分の気持ちに向き合う勇気

「この女、宇賀神組をやめた真山の元カノかも知れないぞ。真山の前に付き合っていた岩水の話しではいかにも胡散臭いセミナーに参加するようになったのが半年前だ。まさか新興宗教の勧誘だったとはこれっぽっちも思わなかったみたいだ。元カノはシェドに心酔しどんどんのめり込んでいった」 「シェドはまるで蜘蛛みたいですね。糸を張ってじっとしていれば、獲物が向こうから来るんですから」 「あぁ、そうだな。元カノは出産して間もない。若いからって大丈夫だって過信するとあとでとんでもないしっぺ返しを食らうことになる。産後の体は交通事故に遭ったのと同じだとよく聞く。少しは自分の体を労ってやらないと。休ませてやらないとな」 「卯月さん、橘さん、何か言いたげですよ」 コウジさんが指を指した。 「原因は分かっている。十中八九俺だ」 彼が苦笑いを浮かべた。 「なぁ、コウジ、帰るまえに色々と聞きたいことがある。ツラを貸してくれ」 「俺で良ければ喜んで」 コウジさんは嬉しそうだった。 「卯月さんはオヤジの兄貴。俺ら下っ端にとってはまさに雲の上の存在。嬉しいです」 羨望の眼差しを向けられ、彼が止せや、照れるんじゃねぇかと前髪をくしゃくしゃと掻いた。

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