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番外編 安川さん

市からの助成金がもらえるのが今年度中までて、老朽化した集会所を建て替える計画が進んでいる地区の集会所には毎年十月に行われている秋祭りの際に参加者全員で記念撮影をした写真が所狭しと飾られている。昭和五十年くらいからだから四十数枚の写真がズラリと並んでいるということになる。 「床がぎしぎしと言っているから踏み外さないように気を付けてね。えっと確かこのあたりだったような……」 安川さんと吉田さんが写真を探しはじめた。 「十五年くらい前かしらね。その年の夏に町から引っ越して来た家族がいるのよ。十年くらい借り手がなくて空き家になっていたあばら屋みたいな家を自分たちで直しながら住みはじめたよ」 「十五年前、ですか」 「えぇ。年は取りたくないわよね。最近もの忘れが酷くてね」 「敏子さん、これじゃない?」 吉田さんが一枚の写真を指差した。 「取ってもいいか?」 「いいけど届く?椅子を持ってこようか?」 「大丈夫だ」 背伸びしてひょいっと写真を外す青空さん。安川さんも吉田さんも、あれま~~と口をあんぐりと開けて呆気に取られていた。 「子供がたくさんいる」 「昔はなんせ大勢いたのよ。こども神輿を担いで地区を練り歩いて、お駄賃代わりにお菓子をもらったりして、そりゃあもう賑やかだったわ。今は数えるくらいしかこどもがいないからこども神輿もなくなってしまったの」 「真ん中に写ってるのが私の息子よ。結婚して市内の別なところに家を建ててしまったからここにはもう戻っては来ないけど、息子が孫やほかのこどもたちと一緒にその家に行ったとき、子どもがいないはずなのに五歳くらいの男の子の幽霊を見たって半泣きして帰ってきたの。盆に帰ってきたときその家の前を通ったとき寒気がしたって。今もいるかも知れないわ」

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