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番外編安川さん
「連れていってくれないか?」
「構わないけど、本当に出るかもしれないわよ。男の子の幽霊が」
「心配無用だ」
「安川さん、吉田さん、その家の住人はこの写真に写ってますか?」
蜂谷さんが聞くと、
「あまり他人と関り合いを持ちたくない、訳ありみたいな、そんな家族だったから、ほとんどご近所付き合いもなかったの。だから写真も残っていないの」
「そうですか」
気になることがあるのか蜂谷さんが写真をじっと眺めた。
「あ、あの……何か気になることでも」
「この人白雪美容室の白雪ハツさんでよね?知り合いが白雪美容室に通っているんですよ。ハツさんこちらの地区の出身なんですか?」
「えぇ。そうです。よく分かりましたね。私たち同級生なんですよ」
「美容室は放火されるし、ハツはひき逃げされるし」
「踏んだり蹴ったりよね」
安川さんと吉田さんが心配そうに何度もため息をついていた。
「震災のときに被災して壊そうとしたけど、所有者がころころ変わって壊すことが出来なくて十年以上そのままずっと放置されているのよ」
【危険!立ち入り禁止!】と立て看板が立てられた建物は道路側に向かって傾き今にも崩れそうになっていた。通学路になっているから、子どもたちが巻き込まれないかそれが心配だと安川さんと吉田さんが話していた。
建物の後ろは一面田んぼだ。腕を前で組みあぜ道から建物をじっと眺める蜂谷さん。ふとあることに気付いた。
「ポスターが飾られている。王子様といえば薔薇がよく似合うからな。なるほどな」
独り言をぶつぶつと口にすると、彼のところに電話を掛けてきた。
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