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番外編 ひとを引き寄せる不思議なちから

「確か十五年くらい前に頭のイカれたナルシストの殺人鬼がいたんですよ。いまでいうと人気インフルエンサーとかユーチュ―バ―っていうんですかね。よく分かりませんが、かなりぼろぼろですが、ソイツのポスターが目の前にあるんですよ。オヤジ、伊澤さんに来てもらうことは可能ですか?」 「分かった。根岸に聞いてみる」 「お願いします」 その頃青空さんはというと、安川さんと吉田さんと立ち話をして盛り上がっていた。二人も見た目だけで青空さんを悪い人とは判断しなかった。でいつでもお茶を飲みにきっせ。歓迎するわ。すっかり意気投合したみたいだった。 「根岸、悪いが」 「話しは聞いていました。すぐに向かいます」 「頼むな」 「任せてください」 背もたれに掛けてあった上着を颯爽と肩に担ぐと、隣の部屋で控えていた伊澤さんに「行くぞ」と声を掛けて二人で仲良く向かった。 「オヤジ、十五年くらい前の事件といったら……」 「覚えているか?」 「はい。よく覚えています。刑事になろうと決めたのもこの事件がきっかけのようなものですから」 「ハチが白雪夫婦の娘の写真を送ってきてくれた。失踪するニヶ月前、盆休みで帰省していたときのだ。ハチと青空を行かせて良かった」 「青空は不思議なヤツです。まるで磁石ですね」 「ん?」 「見た目はアレですがみんな青空に吸い付くようにくっついてくる。ハチと子どもたちもそうですが、全く知らないおばあちゃんやおじいちゃんまで青空に。だから初対面でもすぐに意気投合して話しが盛り上がり、思わぬ収穫をもたらす」 「確かにそうだな。青空もそうだし、未知も人を引き寄せる不思議な力を持っているからな」 彼が何かを思い出してふふっと笑んだ。 「オヤジ?」 「いやな、年を取った。そう思っただけだ。未知に飽きられないように男を磨かないとな」 「俺も紗智に飽きられないように精進します」 鞠家さんが決意を新たにしていた。

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