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番外編 度会さんが唯一苦手なもの
「いるならいると一言くらい言ってくれ。心臓が止まるんじゃないかとおもったぞ」
「あらあらすみませんね。やましいことがないなら一言くらいそう仰ってくれればいいのに」
「やましいことなんてある訳ないだろ」
「本当に?」
疑いの目を向けられギクッとする度会さん。
「俺は紫一途だ。遼禅や義夫みたいに若い女に鼻の下を伸ばすとでも思ったか?」
「いいえ、思っていませんよ。さてと青空さんにご褒美にミートパイでも作ってあげようかしらね」
紫さんがるんるん気分で鼻唄を口ずさみながら台所へと向かった。
「あの笑顔がおっかねぇんだ紫は。不倫なんぞしたら間違いなくまた血の雨が降っぺした。俺はまだ死にたくない。せめてめぐみたちが成人するまでは生きたい」
度会さんがブルブルと震えていた。
「また?度会さん、もしかして……」
「一回きりだ。酒の勢いでつい。あれは若気の至りだ。ただし女じゃないぞ。彼は………」
「そこまでは聞いてませんよ」
彼がクスリと笑った。
「仲がいいんですね」
「そう言う卯月だって未知と仲がいい癖に」
顔を見合わせるなり、やっぱりカミさんが一番だな。ププッと笑い出す二人。本当の親子みたいに仲がいい。
「どうした?お前が電話を掛けてくるなんて珍しいな」
―玲士の奴、そっちにいると一言も言わないんだ。昨夜千ちゃんから聞いてはじめて知った。弟が迷惑を掛けてないか心配で、仕事も手につかなくてな―
「亜優に対する愛が重いからな、玲士は。今のところ泣かせたりはしていない。少しは進歩したんじゃないのか?嫌われたら一貫の終わりだしな」
ー迷惑を掛けていないなら良かった。卯月、悪いが弟を頼むー
「任せておけ」
ーじゃあ切るなー
「待て、甲崎。他にも用があるから電話を掛けてきたんだろ?違うか?」
ー卯月には隠し事は出来ないなー
観念したように自嘲する甲崎さん。
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