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番外編緊急召集

ー紫竜の顔を知る者はごく僅かしかない。もうすでに来日していて、お天道様の下を堂々と歩いているかもしれない。地竜に聞いたところでそう簡単には教えてくれないだろ?未知さんが紫竜に会ったことがあると噂で耳にしたんだがー 「紫竜は変装していたからな。未知も本当の顔を見ていない。紫竜は顔を知られていないことをいいことにやりたい放題だ。地竜が日本にいることを知ってか知らぬかいいご身分だと。甲崎、なかなか面白い情報がある」 ー俺もだー 縁側に移動し、いつになく真剣な表情で甲崎さんと三十分近く話し込んでいた。 玲士さんはソワソワしながら彼の近くを何回も行ったり来たりしていた。 「遥琉さん、お風呂空いたよ」 彼を呼びに行ったらスーツに着替えていた。 「出掛けるの?」 「あぁ。本部から招集がかかった。東京に向かう」 「え?これから?もう九時だよ。寝る時間だよ」 「そうだな、確かに子どもは寝る時間だな。鷲崎と途中の駅で合流する。コウジと達治をついでに送ってくる。玲士と与志之はここに居残りだ」 鞠家さんの協力者から、紫竜さんに一番近い人物が今夜到着する東南アジアからの直行便で来日するという情報が入ったのは夕方のことだった。お姉ちゃんから呼び出され新幹線で急遽上京することになった彼。 「そんな顔をするな。行きたくなくなるだろ?」 え?そんな顔って、どんな顔をしていたんだろ?顔をペタペタと触っていたら、クスクスと困ったように笑われてしまった。 「十五分発に間に合えば十一時前には東京に到着する。着いたらメールするから。返信はいいからな、寄越さなくても。じゃあ、行ってくる。留守番を頼むな」 おでこと頬っぺと、鼻先と、最後に唇にチュッと軽く行ってきますのキスをしたのち、上着を颯爽と肩に担ぐと慌ただしく出掛けてしまった。

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