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番外編 王劉帆という男

鞠家さんと柚原さんら幹部が広間に一堂に介し神妙な面持ちで何やら話し込んでいた。玄関に行くためには広間を通るしかなくて。まさに鬼門だ。「大事なお話をしているから邪魔しないようにしようね。しーだよ」唇の前に指を立てて小声で太惺と心望に話し掛けながら二人の手を握り足早に通り過ぎようとしたけど、大好きなぱぱたんや鞠家さんを二人が見逃すわけなどなく。 「太惺、心望、ちょっと待って」 にっこりと笑うと手を振りほどき、ぱぱたんと鞠家さん目掛けて一直線に駆け出した。 「お、来たな」 「おいで」 鞠家さんと柚原さんが両手を広げると、キャキャとはしゃぎながら、太惺は鞠家さん、心望は柚原さんの腕のなかに勢いよく飛び込んでいった。 「邪魔してすみません」 「そろそろ二人に見付かるころだとは予想はしていたから気にするな。ヤスが来るまで休憩だ」 太惺と心望はみんなに代わる代わるに抱っこしてもらい、いじくりこんにゃくになっていた。 「いやぁ、めんこいな」 普段は近寄りがたいオーラを放つ強面の表情が緩み、みんな目尻が下がりっぱなしになっていた。 「姐さん、すっかり言い忘れていましたが、ヤツが来ます」 鞠家さんに言われ、誰のことか分からずキョトンとしたら、くすりと笑われてしまった。

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