3086 / 4015
番外編 地竜さんと与志之さん
それから三十分後のことだった。
「宝贝,我爱你《バオ ベイ ウォ アイ ニー》!
我想你《ウォ シィァン ニー》!」
聞き覚えのある声が聞こえて来たのは。
「頭のネジが一本取れて、ついにおかしくなったか?」
「ヤツがおかしいのはもともとだろう。昔、紫竜と対峙したときに腰に爆弾を巻き付けて、紫竜を巻き添えにして自爆しようとした武勇伝があるくらいだからな。まともじゃない」
「何で誰もいないんだ。未知、たいくん、ここちゃんいたら返事してくれ」
「姐さん、返事をしてやってください。ヤツに駄々をこねられるといろいろと面倒です」
「地竜さん、ここです。広間にいます」
ドタドタと賑やかな足音が聞こえてきて、
白シャツにジーンズというラフな格好で地竜さんが姿を現した。
「ハニー!愛してる!会いたかった!」
人目をはばかることなく思いの丈をぶつけると、もう離さないと言わんばかりにぎゅっと抱き締められた。
「地竜、姐さんが好きなのは分かるが、あまりしつこくすると嫌われるぞ」
「カシラの言う通りだ」
「それだけは困る。未知に嫌われたら最後。ほぼ100パーセント俺、生きていけない。未知、悪かったな。痛かっただろ?」
地竜さんが腕の力を緩めてくれた。
「なんで来たんだ?」
鞠家さんと柚原さんの声が見事にハモった。
「鞠家も柚原も相変わらず塩対応だな。ここは俺にとって実家みたいなものだろ?」
「ここは度会さんの家だ」
「なんか言ったか?最近どうも耳が聞こえにくくてな」
「あのな地竜……」
都合が悪いことになるとすっとぼけてとんちんかな受け答えをする地竜さんに、鞠家さんが頭を抱えてしまった。
ともだちにシェアしよう!

