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番外編地竜さんと与志之さん

「お前は一体何者なんだ?本物の長盛与志之はどこにいるんだ?」 「さっきから黙って聞いていれば、訳の分からないこと言い出すし。おっさん、俺は正真正銘、本物の長盛与志之だ」 与志之さんがポケットから財布を取り出すと免許証を座卓の上に置いた。 「一回病院に行って頭がおかしくなっていないか、検査してもらったほうがいいんじゃないの?」 地竜さんを馬鹿にするようにお腹を抱えて、ガラゲラと声を出して笑い出した。 「鞠家からなかなか興味深い話しを聞いたぞ。洌崎組の元構成員の顔を忘れていただけでなく五年も寝食を共にしたミツオの顔すら思い出せなかったと言うじゃないか。長く大陸にいたからだと?へぇ~~」 与志之さんが上着の内ポケットにすっと手を入れようとしたけど、地竜さんのほうが早かった。目にも止まらぬ早さでどこからか小型ナイフを取り出すと身を乗りだし与志之さんの額に突きつけた。 「ここには男なら守るべき女と子どもがいるんだ。ドンパチ厳禁だ。そこにある物騒なモノ、こっちに渡せ」 ドスのきいた地竜さんの低い声で凄まれ、与志之さんは観念したのか隠し持っていたボールペンを取り出したけど、渡すフリをして、地竜さんに向けた。ニヤリと与志之さんが口角をあげて笑った。鳥肌が立つくらい冷たい目で。

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