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番外編地竜さんと与志之さん
「あれはボールペンの形をした銃だ」
蜂谷さんと青空さんが僕の前にすっと立った。
「その引き金を引いたら最後だ。脳みそが吹っ飛ぶぞ」
ここにいないはずの覃さんの声がしてきて。蜂谷さんと青空さんの間からそっと覗くと、与志之さんの背後に覃さんが立っていたから腰を抜かすくらいビックリした。
いつからいたんだろう。
全然気付かなかった。
地竜さんも覃さんも神出鬼没だ。どこから現れるか予想も出来ない。気配すら感じない。気付いたら後ろに立っていたということが何回もあった。
お前の行動はすべて筒抜けだ。卯月はお前の化けの皮を剥がすためにわざと東京に向かった。泳がせれば必ず尻尾を出すと予想してな
「卯月がいなければ妻子を人質にするの、めちゃくちゃ簡単じゃん。楽勝じゃんと思ったのにな」
舌打ちをしながら怨み節を口にする与志之さん。悪びれる素振りは一切見せなかった。
「たとえ卯月が不在でも、卯月の婿殿がしっかりと留守を預かっているからな」
「ここには能無しの昼行灯とボンクラしかいないって。くそ、アイツら嘘つきやがって」
地団駄を踏む与志之さん。
「ミツオはお前を一目見て与志之によく似ているが与志之じゃないと断言した。隙をみてこれとボールペンを交換した。いったいいくらで引き受けたんだ?」
「ボスが聞いているんだ。さっさと答えろ」
真顔で淡々と言葉を紡ぐ覃さん。
「教える訳ねぇーじゃん」
額にナイフ、おそらく後頭部に銃を突き付けられ、絶体絶命、不利な状況にも関わらず与志之さんはゲラゲラと笑い出した。
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