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番外編遥琉さんおかえりなさい
「マッチングアプリで知り合った小夏に実際に会ったとき与志之は驚いたはずだ。手の届かない存在である依然《イーラン》様がすぐ目の前にいるんだから。与志之は小夏を知っていても小夏は一介の信者にしか過ぎない与志之の顔などいちいち覚えていなかった。誰でもいいから籠の中から連れ出してほしかった小夏は自分が好きな与志之をうまい具合に利用した」
「中学生にして男を手玉にとるとはな。末恐ろしい女だ」
「わがまま放題、テウや信者たちに甘やかされて育てられたからな。自分を中心に世界が回っているとでも思っているんだろうよ。まゆこみたく」
まゆこさんはすっかり雲隠れしてしまった。噂では警察の捜査から逃れるため他人の戸籍を買い、別人として生きているみたいだった。
「大山、くれぐれも気を付けろよ。明日は我が身だ」
「おやっさんこそ気を付けてくれよ。新婚なんだから」
大山さんが後ろを振り返った。
「根岸、おやっさんを幸せにしてくれ。頼んだぞ」
「お前に言われなくてもそのつもりだ」
照れているのかな?ぶっきらぼうに言うと、プイと顔を逸らす根岸さん。幸せオーラ全開だ。
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