「ツアー客に紛れ込み来日した相楽の手下の男が別行動でこっちに向かっている。王《ワン》劉帆《リュウホ》という名前だそうだ。地竜、その名前を聞いたことがあるか？」 「あぁ、黒社会ではかなりの有名人だ。日本の警察とインターポールに追われ、当局からもスパイとしてマークされている。逮捕されるリスクを犯してまでも来日したのは先に帰国しているこれに会うためだろう」 地竜さんが小指を立てた。 「噂では県内出身らしい。里帰り出産するためだ。王にとって５０歳を過ぎてからはじめて出来た子どもだ」 「５０歳だと？」 彼が驚いたような声を出した。 「そうは見えないだろ？騙し取った金で顔を整形し若作りに余念がない。金持ちだしあのルックスだからな女のほうから寄ってくるみたいだ。紫竜もシェドも王も女は使い捨て、便利なモノとしてしか見ていない。だから大嫌いだ。生涯でただ一人のひとを愛し、添い遂げようとなぜしない？」 「熱弁を振るうボス、久し振りに見たぞ」 「カッコいいな。虜になるな」 覃さんと宋さんに熱っぽい眼差しを向けられドキッとする地竜さん。