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番外編 紫さんの直感
「く、来るな、変態ども。ジョーとワカに言いつけてやるぞ」
逃げようとした地竜さんだったけど、多勢に無勢。抵抗する間もなく二人に捕まってしまった。
「またいちゃついているのか。相変わらず仲がいいな」
「卯月、頼む。笑って見ている暇があるなら助けてくれ」
「助けてやりたいのはやまやまなんだが、生憎両手が塞がっている」
大好きなパパが帰ってきたんだもの。太惺も心望も彼の膝にちょこんと座り、にこにこと機嫌良く笑っていた。
「そういえば紫さんがおかしなことを言ってたな」
「おかしなこと?」
「あぁ、誉が千里の名代として度会さんに挨拶しに来たことがあるんだ。誉の顔を見た紫さんが誰かに似ていると話していたんだ」
覃さんと宋さんに抱き付かれ身動きが取れない地竜さん。
「こら、触るな!」
「触るなと言われてもな」
「目の前に好物があるんだ。無理だな」
何とか抜け出そうとじたばたと二人の腕の中でもがく地竜さん。ぴくりともしなかった。
「誉の本当の母親は義夫に監禁されていて、隙を見て逃げ出し、助けを求めて当時の片山組に駆け込んだんじゃないか?門前払いをしようとした組員たちを紫さんが止め、一時的に匿ったんじゃないか?だから、義夫は片山組を、ヤクザを毛嫌いしているんじゃないか?」
「卯月さん、ありがとう。ようやく思い出したわ」
紫さんが部屋に入ってきたから驚いた。
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