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番外編 紫さんの直感

「覃に注意しただけで二人のことじゃないからな。怒ったように聞こえたなら謝る。卯月、どうしたら泣き止む?」 「ひとしきり泣いたらピタリと泣き止む。ほっとくのが一番だ」 あたふたする地竜さんを尻目に覃さんがさっとスマホを取り出すとカシャ、カシャ、と写真を何枚も撮影していた。 「覃、それをどうする気だ?」 「七海に送る。泣き顔も可愛いから見たら喜ぶだろ?」 「てか、なんで七海のメールアドレスを知っているんだ?」 「緊急事態の用があるとき、連絡先がいくつあってもいいだろ?」 「なるほどな」 彼と地竜さんがそんな会話をしていたら、 「パパ、たいへんだよ!」 遥香がばたばたと駆けてきた。  お姉ちゃんの声に驚き二人がピタリと泣き止んだ。 「どうした?」 彼が手招きして遥香を膝の上に座らせた。 「あのね、えっと……」 「わすれちゃった」 頭を搔きながらエヘヘと笑う遥香。 「パパにお客さんでも来たのか?」 「うん」遥香が大きく頷くと「なんでないてたの?」と心配そうに心望の顔を覗き込み、笑顔で頭をぽんぽんと優しく撫でてくれた。 「そうか、呼びに来てくれたんだな。ありがとう遥香、ここちゃんを頼んでもいいか?」 「うん、いいよ。あ、そうだ。とりなんとかってにいにがいってたよ」 「とり?鳥飼のことかな?」 彼がよっこらっしょと掛け声を掛けなながら立ち上がった。 「とりはとりでもトリプルじいじのことじゃないか?」 「親父と茨木さんと惣一郎さんが三人仲良くここに来るわけ……いや、十分あり得る。孫やひ孫に会いたいだろうし、惣一郎さんは息子に会いたいはずだ」 彼と地竜さんの予想は見事に当たった。

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