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番外編 惣一郎さんと会うのが照れくさい蜂谷さん
「誰か、倅を掴まえてくれ!」
惣一郎さんの声が屋敷中に響き渡った。
「ねぇ、ママ、せがれってなに?」
「蜂谷さんのことだよ。そうじいじが来たみたいだね」
「おっきいじいじと、じいじも?」
頷くと遥香の目がきらきらと輝きだした。
「挨拶に行こうか?」
地竜さんが遥香に声を掛けた。
「うん、いく。ひまちゃんもいくよ。ディノンさんも。はやく、みんな、たっちして」
地竜さんが太惺と手を繋ぎ、遥香が心望と手を繋ぎ廊下に出ようとしたら、
「助けてくれて!」と言いながら蜂谷さんが駆け込んできた。
「親父さんと会うのが照れ臭いのか?」
「いや、そういう訳じゃない。俺が苦手な野菜をこれでもかと段ボールに詰め込んで一方的に送りつけてくるんだ。嫌味としか思えない」
「それが親心っていうものじゃないのか?子どもが大人になり一人立ちしても親は子どものことが心配でならない。だからオレオレ詐欺とかに騙されるんじゃないか?親兄弟がいない俺にとっては羨ましいことだ」
返す言葉がないのか蜂谷さんが押し黙ってしまった。その時、
「ここにいたのか」
惣一郎さんがひょっこりと顔を出した。
「あ、そうじいじだ」
「ハルちゃん久し振りだな。見ないうちに大きくなったな。たいくんもここちゃんも大きくなって。あんよが上手になったな」
前に会ったときのことなんか忘れて太惺と心望にギャン泣きされると思っていた惣一郎さん。恐る恐るなるべく目を合わせないように頭をそっと撫でると、二人とも泣かないでにこにこの笑顔になった。これには惣一郎さんも嬉しくて目尻が下がりっぱなしになった。
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