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番外編惣一郎さんと会うのが照れくさい蜂谷さん

「お義父さんその怪我……どうしたんですか?」 両方の手首に包帯を巻いていたから驚いた。 「温泉で一汗流して帰ろうとしたら、神政会の若いのが土産屋で店員にいちゃもんをつけて金を巻き上げようとしていたんだ。そのときたまたま偶然近くにいた家族連れに目を付けてな。アイツら遥香くらいの子どもを人質に取り車で逃げようとしたんだ。それがどうしても許せなくてな。気づいたら体が先に動いていたんだ」 「名誉の負傷だ。警察から感謝状をもらった。上総は元ヤクザだからと固辞したんだが、女の子の家族からどうしてもと懇願されてな」 お祖父ちゃんがスマホを操作し見せてくれた。 「当たり前のことをしたまでだ。だから写真を撮るのはいいが新聞に載るのだけは勘弁してくれと頼んだ。儂が岳温泉にいることが広く周知されれば常日頃良くしてくれるご近所のみんなに迷惑が掛かってしまうからな」 「親父それは分かるが、俺ら家族なんだ。ひと言くらいあってもいいだろう。肝を冷やしたぞ。このくらいの怪我で済んだから良かったが、もし親父に何かあったら俺や未知、それに心や裕貴、孫たちにもう二度と会えなくなるんだぞ」 「心配掛けて悪かった」 お義父さんがバツが悪そうに苦笑いを浮かべながら頭を搔いた。

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