3117 / 3634
番外編もし赤い糸があるなら
「ごめんな、言うのが遅くなって。それと紗智にひと言もなく勝手に決めて悪かった」
「悪くないよ。僕が高行さんだったら同じことを言ってたよ」
虫が苦手な那和さん。作業をはじめて数分後。小さな緑色の虫を見付けるなり逃げ出した。
一太と奏音くんは塩茹でした枝豆が大好きだ。枝豆さえあればおとなしい。
「お手伝いする」
さっそく枝豆を見つけた二人が駆けてきた。
「塩茹でにして一太と奏音のおやつにするのはもちろん、一太のじいちゃんたちにご馳走するのにずんだ餅を作るみたいだ。もち米は安川さんが精米してくれたのをヤスがもらってくることになっている。枝豆を茹でてフードプロセッサーで潰してずんだ餡を作るんだ。手が痛くなったら止めていいぞ」
鞠家さんと紗智さんの間に奏音くん、橘さんと柚原さんの間に一太がそれぞれ座りさっそくお手伝いをはじめた。
「なんかいいね。家族って感じがして。のどかで、平和で」
「そうだな。なぁ、紗智。変なことを聞いてすまないが、ウーとフーのことを知っていた。ということは覃と宋のことも知っていたのか?」
「本当に変な質問だね」
ププッと笑う紗智さん。
「高行さんも知っている通り地竜も覃も宋ももともとは青蛇の幹部だった。僕たち下っ端にとってはそれこそ雲の上の人だった。会うこともなければ話し掛けるなんてこともなかった。それなのに地竜は僕たち兄弟を見つけてくれた。覃も宋も表には出ることはなかったけど地竜と一緒に地獄から助けてくれた。ウーもフーにも助けてもらった。四人はボスに助けろと言われただけ。だから礼はするなと言われたけどすごく感謝している。那和と亜優、兄弟三人一緒に暮らせるなんて夢のまた夢。諦めていたから」
当時のことを思い出したのか紗智さんの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
ともだちにシェアしよう!