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番外編 明日は我が身
お義父さんの顔を一目見るなりギクリとする王 劉帆 さん。
「何で龍一家の組長が福島にいるんだっていう面だな。祖国の土を踏むのが久し振り過ぎてまるで浦島太郎状態になっているんだろう」
「喧しい」
「お前さんが大陸にいる間、昇龍会は世代交代が進み、儂らみたいな口喧しい年寄りはみな若いのに組を譲り悠々自適の隠居生活を送っている。お前さんが知っているのは腐りきった古い体質の昇龍会だろう?相楽は行方不明だ」
「嘘を付くのが下手だな。すぐバレるような嘘を付くな」
「嘘ではない。こそこそ隠れている神政会の若いのに聞いたらいい。相楽をどこにやったんだと」
お義父さんと度会さんは一寸の隙も見せず、鋭い目付きで神政会の人たちをじろりと睨み付けた。
「あいつらは何の罪もない子どもを人質にするような連中だ。明日は我が身だ。妻子に会ってさっさと帰った方が身のためだぞ」
お義父ちゃんが王 さんに釘を刺した。
彼と地竜さんと鞠家さんは少し離れたところで静観していた。
「彼は偽者だ。本物の王 は三人組の真ん中にいる男だ。神政会の幹部もいる。恐らく偵察しに来たんだろう」
地竜さんが表情を引き締めた。
「子どもたちを不安にさせないように普段通り接するように。持ち場に戻れ」
彼が若い衆に指示をしていると、
「オヤジ」
鞠家さんが何かに気付いた。隠れている三人組の目と鼻の先で根岸さんと伊澤さんがご近所のおばちゃんたちと井戸端会議をしていた。
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