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番外編明日は我が身
「ママ、何の音?ドンって聞こえたよ」
「ぱぱたん、じしん?」
茹であがった枝豆をたまにつまみ食いしながら、豆をはじいていた一太と奏音くんが手を止めて不安そうに僕と柚原さんの顔を見上げた。
「ただの交通事故だから心配ない」
台所に入ってきた鞠家さんがにこりと微笑み二人の頭を撫でてくれた。
「ぱぱたんどれ持ってく?」
「みちさん、どれ?」
めぐみちゃんと幸ちゃんがひょっこりと顔を出した。
「めぐみちゃんと幸ちゃん。二人もお手伝いか。感心だな」
「だって面白いんだもの。優輝は紫さんと一緒にもち米を洗っている。このくらいおっきな釜でご飯を炊くんだって」
めぐみちゃんが両手を大きく広げた。
「もしかしてずんだ餅は初めてか?」
「うん。食べたことない。あと白いお餅も作るんだって。楽しみ」
「そうか。良かったな」
めぐみちゃんははじいた枝豆が入ったボールを両手で抱えると幸ちゃんと仲良く居間へと戻っていった。
家の外では大変なことが起きていたけど、子どもたちを不安にさせてはいけない。普段通り振る舞え。彼の言い付けを守り、普段通り何事もなかったようにしてくれていた。みんなありがとう。心のなかで何度も繰り返した。
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