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番外編タン シャン
若い衆が庭にビニールシートを敷き、杵と臼を物置小屋から取り出して餅つきの準備をしていた。
縁側に惣一郎さんと蜂谷さんが並んで座っていた。久し振りの親子水入らずの時間を過ごしているようだった。
「しかしまぁ、なんでこうも若い人たちは無茶ばかりするんだ?」
惣一郎さんが熱いお茶をふぅふぅと冷ましながらボソッと呟いた。
「そりゅあ、捕まりたくないからに決まっている。ヤツの狙いは奏音だ」
「顔を見られたくらいで子どもの命を狙うか?」
「悠仁の宝物の隠し場所を聞き出すためなら連中は手段を選ばない」
「なるほどな」
王さんの偽物を置き去りにしたまま車に乗り込むと強行突破したタン シャンさんこと湯山さん。楮山さんの腹心の男だったみたいで、悠仁さんとなにやら関わりがあるみたいだった。
「楮山の亡霊がまだそこら辺をウヨウヨしているのか?邪魔するぞ」
青空さんがどかっと腰を下ろした。
「きみは俺と家内にとってもう一人の息子だ。まさに両手に花。来て良かった」
惣一郎さんは嬉しそうに笑った。
「それだけ楮山と九鬼の影響が色濃く残っているということだろう。みな金の亡者だ」
蜂谷さんが深いため息をついた。
「遥琉さん、地竜さんおかえりなさい」
二人を笑顔で出迎えると、
「それ以上近付くな」
「未知ストップ」
二人に待ったをかけられた。
よく見ると二人が着ているシャツの袖に血がついていた。
「急いで手当てしないと」
一瞬頭のなかが真っ白になった。
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