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番外編タンシャン
「会長、俺らがやりますから」
「無理なさらないで下さい」
おろおろする若い衆たち。
「へっぴり腰だし、まどろっこしいし、とにかく危なっかしくて見ていられない。いいか、よく見てろ。餅つきはこうやるんだ」
奪うように杵を受け取ると合いの手担当の惣一郎さんと息もぴったり。ほとんど餅つきをしたことがない若い衆に手取り足取り教えてくれた。
子どもたちは身を乗り出し目をキラキラとさせて興味津々だった。めぐみちゃんと優輝くんが卒園した幼稚園では餅つき大会がなかったみたいでそれこそ身を乗り出して見ていた。
「ハチ、ほら」
度会さんが杵を蜂谷さんに渡した。
「息の合ったところを若いのに見せてやってくれ」
「は?俺ですか?」
「あと誰がいるんだ。青空にも教えてやっくれ」
まさか指名されるとは思っていなかったみたいで驚いていた。
こうして和気あいあい和やかな雰囲気のなか
餅つきは大いに盛り上がった。子どもたちにとってまた素敵な思い出が増えた。
「いやぁ~~俺までご相伴に預かり申し訳ない」
大山さんが頭を掻いた。
「東京に帰ったフリをして、捜査員を連れてすぐに戻ってきた。さすがだな」
度会さんがお猪口を口に運んだ。
「卯月さんが描いた絵図通りになっただけだ。千ちゃんもそうだが、卯月さんも先見の明がある」
見かけはこんなしょぼくれたおっさんだが、実は甘いものが大好きだ。という大山さん。ずんだ餅とあんこ餅を三回もおかわりして美味しそうに頬張っていた。
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