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番外編タンシャン

パニックを起こし錯乱し根岸さんを光希さんと思い込んでいた。 鼻をずずっと啜りながらコアラみたく根岸さんにぴたっと抱き付く奏音くん。ようやく安心したみたいだった。 「息を吸うんだ。ゆっくり吐いて。そう、上手だ。奏音、もう大丈夫だ」 根岸さんが頭を撫でたり、背中を擦ったりして宥めていると、 「あれ?じぃじだ」 ピタリと泣き止むとびっくりしたように目を丸める奏音くん。 「ごめんな、光希じゃなくて」 「ううん、じぃじにも会いたかった。お帰りなさい。いざわさんは?一緒じゃないの?」 「伊澤は廊下にいる。じぃじも奏音に会いたかったよ」 「じぃじ、怖い思い出ばかりじゃないよ。駅前にある足湯、じぃじと一緒に入れてすごくうれしかったんだよ」 「そうか。じぃじもぞ。また行こうな」 「うん」 奏音くんのいう足湯とは、磐梯熱海駅前にある足湯のことだ。たまたま偶然なのか、その日はお湯の温度がすごく熱かったみたいで、足湯にほんのちょっとだけ足をつけただけで、目の前にあった食堂でソフトクリームを食べて帰ってきた。奏音くんを見る根岸さんの眼差しは優しさに溢れていた。 それから三十分後、ヤスさんたちが帰ってきた。 「湯山たちは神隠しにあったように忽然と姿を消しました」 「どうした!?解せない顔だな」 「なぜか若井がいたんです」 「マル暴だ。いても何ら不思議じゃないだろ」 「それはそうなんですが……タイミングが良すぎるというかなんと言うか……」 ヤスさんが言葉を濁らした。

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