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番外編タンシャン
「若井はマジシャンだ。人を消すなど朝飯前だろうよ」
お祖父ちゃんの耳にも若井さんのことが入っていた。
「いい噂は聞かない。黒い噂ばかりだ。若井が湯山と裏で繋がっていても何らおかしくないだろ?磐梯熱海温泉であれだれの騒ぎを起こしたのにも関わらず警察沙汰にならなかった。絶対におかしい」
お祖父ちゃんも警察に対して不信感を露にしていた。
与志之さんに面会するために明日の始発で東京に向かうことになったミツオさんたち。鞠家さんが彼の名代として付き添うことになった。
「与志之には現地の女性との結婚歴がありそのときに向こうの国に帰化している。不法滞在で強制送還されることになるだろと、玲士から電話があった。ミツオらが与志之に会えるのもこれが最後のチャンスだろう。文句のひとつくらい言わないと気が済まないらしい」
ネットでは日本ではあまり聞き慣れないバウンティハンターと賞金稼ぎがトレンド入りしていた。
「でもまさか与志之の首に五千万円の賞金がかけられていたとは。驚いたな」
「女はおっかねぇからな。しかしまぁ、あの覃がな、本当に驚いた」
「シノギを稼ぐためとはいえ覃と宋には危ない橋をわたらせてばかりいる」
驚く彼とお祖父ちゃんに地竜さんが声をかけた。
「死神のメンバーは大好きなボスのためならたとえ火のなかでも飛び込む。愛されているという証拠だろ?」
「それはそうかもしれないが覃も宋も、愛が重いんだ。止めてくれ。鳥肌が……ぞくぞくする」
地竜さんがぶるぶると身を震わせた。
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