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番外編 つかの間の夫婦水入らずのひととき
着替えが終わるタイミングで地竜さんが脱衣場に入ってきた。
「風呂から上がったら髪をドライヤーで乾かしてやる。千里から髪の美容液を預かってきたんだ。待っててな」
「分かった」
タオルを肩に掛けてくれると、頭をぽんぽんと撫でてくれた。
「卯月と一緒に親子水入らずタイムを楽しんでくる。子どもたちと一緒に風呂に入るのをすごく楽しみにしていたんだ。行ってくる」
「行ってらっしゃい」
手を振ると、地竜さんも笑顔で手を振り返してくれた。
彼と同じで一切躊躇することなく服をぽんぽんと脱ぎ出したから慌てて外へ出た。
「今さら恥ずかしがることでもあるまい」
「だって……」
「未知は相変わらず恥ずかしがり屋なんだな」
クスクスと苦笑いをされた。
戸を閉めるとき、ちらっと背中が見えた。見るつもりはなかったけど、肩から背中にかけてナイフで切られたような傷があった。
「地竜さん、どうしたのその傷」
「あ、これか?喧嘩の仲裁をしていたときにちょっとな。かすり傷だ。心配ない」
「そんなこと言っても」
「心配してくれてありがとう」
最後の一枚を脱ぎ捨てると、タオルを肩に掛けて、浴室のドアを開けて中に入っていった。
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