3145 / 3634
番外編 不可解なことばかり
ぴりぴりとした緊迫の一夜が過ぎ、いつもと変わらぬ朝を迎えた。寝ずの番で組事務所の警備にあたっていたヤスさんと佐治さんらのもとに義夫さんに逮捕状が出たと第一報が飛び込んできた。ヤスさんから連絡をもらった彼が電話を切ったあともなぜかスマホの画面をじっと見つめていた。解せないという表情を浮かべていた。
「遥琉さんどうしたの?何か気になることでもあるの?」
そっとしておくべきか散々悩んだ末、恐る恐る声を掛けた。
「ハツさんに対する殺人未遂ではなく、ホルマリン漬けにされている指の持ち主を何らかの方法で殺害し遺棄した容疑だ。状況証拠だけではサツは動かない。動かぬ証拠が出てきたということだろ?それと」
そこで一旦言葉を止めると、テーブルの上に新聞を広げた。
「人骨が発見されたなら新聞に載るはずだ。それがない。それに鷲崎組と宇賀神組に発煙筒が投げ込まれたこともどこにも書いていない。ついさっきネットニュースを確認したがそれらしき記事はなかった」
「警察が報道を控えるように要請したとか?」
「それは十分にあり得る。でも、人骨が出たことを報道すれば、行方不明になっている家族かも知れないと名乗り出てくる人だっているはずだ。集会所はだいぶ老朽化が進み床板も痛んでいた。安川さんの話だと二年前床板が外れているのが見つかり修繕したそうだ。その時に人骨を埋めかも知れないだろ?そうなるとごく最近のことになる。帰りを待つ家族のもとに一刻も早く返してやらないと成仏したくても成仏出来ないだろ?」
彼とそんな話しをしていたら、おはよー。ずいぶんと早起きなんだな、とあくびをしながら地竜さんが起きてきた。
ともだちにシェアしよう!