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番外編不可解なこと
度会さんはその女性の顔を見るなり、
「白雪義夫の自宅にサツが踏み込むのは何時だっけ?」
と台所に並んで立ちコーヒーを淹れていた橘さんと紫さんに聞いた。
「さっき伊澤さんが七時とか言ってなかったかしら?ね、橘さん」
「証拠隠滅の恐れがあるので予定より早まるかも知れないと話していました」
「そうでした。もうやぁね、忘れっぽくて。年はとりたくないわね」
おほほと紫さんが口に手をあてて上品に笑った。
「死人に口なし。白雪義夫さんが死んだらもともこうもありませんからね」
「自殺する恐れがあるってこと?」
「指をホルマリン漬けにして優越感に浸り鑑賞しているような人ですからね。彼は。自殺するような人ではありません」
「ということは、樋口さんとかいう女性が義夫さんを殺す可能性がある、ということ?寿さん、そうなの?」
紫さんが度会さんに聞き返すと、
「あぁ、そうだ」
度会さんが険しい表情を浮かべて頷いた。
「覃と宋にも同じことを話したが、四十年前の事件は昨日のことのように良く覚えているよ。最後に目撃された男の背格好が白雪義夫に酷似していて、容疑者として捜査線上に浮かび上がった。白雪義夫は自分でアリバイを証明し、容疑者から外れた。女児の死亡推定時刻に、女性たちと飯坂温泉のとある旅館の貸切露天風呂でイチャついている写真を予約表と一緒に顔色一つ変えず堂々と提出しやがった。嫁公認で、大人の遊びを嗜んでいるだけだ。それが文句あるのかと開き直った。子どもが亡くなっているのにそれがどうした。俺は関係ない。アリバイがある。とゲラゲラと笑っていた。俺も若かったからな、義夫の胸倉を掴み殴りかかろうとして先輩刑事が止められたことがある」
度会さんが携帯を操作し写真を二人に見せた。
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