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番外編不可解なこと
「サツに行ってどうする?若井に消されるぞ」
樋口さんの足が止まった。
「知りすぎた者はすべて消されている。自殺に見せかけて殺すなど造作もない。証拠はいくらでもでっち上げることが出来る。若井はそういう男だ。樋口さんや、公安の大山を呼んだから、少し待っててくれないか。ここじゃ人目につくし、狙撃されたら一貫の終わりだ」
固く閉じられていた門扉がゆっくりと開いた。
キョロキョロと辺りをしきりに見ながら中へと入る樋口さん。
ずらりと並んだ構成員の迫力に度肝を抜かれ、呆気に取られていた。
「片山の野良犬ども。義夫はあなた方を馬鹿にしていた。どうせ何も出来ないと。度会さん、組長さん」
樋口さんが紙袋を彼と度会さんの前に差し出した。なかを覗くとだいぶ色褪せてボロボロにはなっているけど、義夫さんが戦利品として大事にしまっていた教科書やノートなどが入っていた。薄くなってしまったけど【さいとう幸子】被害女児の名前が大きな字で書いてあった。
「詐欺に後妻業に殺人。ありとあらゆる犯罪に手を染めた私は合わせる顔がない。お願いです。私の代わりに遺族の方に渡してください」
深く頭を下げた。
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