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番外編 大山さんと若井さん
「手柄を横取りされてたまるか、余所者はさっさと帰ってくれというオーラがただ漏れでな、これは何かあると思い、東京に帰るフリをして途中で引き返したんだ。度会さんに連絡をしたら、白雪義夫に逮捕状が出たと教えてもらい、上澤診療所の駐車場を借りて寝ずの番で待機していたんだ」
大山さんがすぐに駆け付けてくれた。
「県警と公安は違う。信用してくれというのが無理だが、悪いようにはしない」
大山さんが樋口さんに手錠をはめ、捜査員が付き添い門扉の外に出ると、煙草をふかしながら若井さんがイライラしながら待ち構えていた。その手には血がべっとりとついていた。
「犯人隠避の容疑で菱沼組に家宅捜査に入ることになった。手間が省けて良かった。大山さん、その女をこっちに渡してもらおうか」
煙草をぺっと吐き捨てると足で踏みつけた。
「断る」
「あ?」若井さんが憤怒の形相で大山さんを睨み付けた。
「犯人逮捕は公安の仕事じゃねぇだろう」
のしかかるような癇癪声を出す若井さん。
「珍しいな一人で来るなんてな」
対する大山さんは怖いくらい落ち着いていた。
「事件が立て込んでいるんだ。人手不足なんだ。単独行動だってする。しょうがねぇだろ。それよりもその女をこっちに渡してもらおうか。その女は殺人事件の容疑者だ」
若井さんが大股でずかずかと大山さんに近付いていった。
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