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番外編大山さんと若井さん
「渡すわけないだろ」
大山さんが懐に手を入れた。取り出したのは拳銃だった。
「うまく化けたもんだな。すっかり騙されるところだった」
大山さんが銃口を若井さんに向けた。
「おっと、お前さんもだ」
樋口さんに鋭い視線を向けた。
「まるで女優みたいに演技が上手くてまるっきり騙されていた。でもハツさんだけは騙すことが出来なかったみたいだな。ハツさんはきみが何者か知ってしまった為に命を狙われた。死人に口なしというが、ハツさんは動画を残し、それを俺ら公安に託した」
樋口さんの両隣にいた捜査員が鋭い表情を彼女に向けた。
「それといい報告がある。ついさっきハツさんが目を覚ましたぞ。良かったな、罪が軽くなって」
樋口さんはイライラと鼻をならし、あざ笑った。
大山さんから樋口を引き渡したら門扉をすぐに閉めろとメールで指示されていた彼。若井に成り済ましているのはおそらく紫竜の懐刀の男だ。狙いは樋口。
地竜さんは腕を前で組み玄関の前に仁王立ちしていた。
「何人《なんびと》たりとも一歩も通すな!相手は百の顔を持つ紫竜だ。警備を怠るな!」
凛とした鋭い声に若い衆たちの表情も自然と引き締まった。
「樋口さんって一体何者なの?」
紫さんがお茶を飲みながら度会さんに聞いた。
「捜査情報だ。教えることは出来ないと大山に言われた」
「あら、そうなの。それは残念ね。さっき樋口さんが話していたこと、作り話しにしてはなかなか真実味のある話しだったから私つい信じてしまったわ」
「樋口が話していたことはなまじ嘘ではない。本当かも知れない」
目を通していた新聞をテーブルの上に静かに置く度会さん。掛けていた老眼鏡をゆっくりと外した。
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