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番外編大山さんと若井さん

「ヤクザも宗教も良くも悪くも縦社会。似たようなもんだ。組長の命令も、教祖の命令も絶対だ。例え間違っていても右と言えば、右だ。俺らは黙って従うしかない。こころやすらぎの教えは、世界平和のためには人類の相互扶助を実現せねばなりません。視を一にし仁を同じくしなければなりませんと説いている。子どもに恵まれない信者に、他の信者の子どもを養子として斡旋することも実際に行われていた。俺が思うに、教祖は最高幹部である海堂と瀧田と白雪は自分の分身。三人の血は自分と同じ、穢れがなく神聖なものと信者に教え込ませていたのかも知れない。四人の優秀な遺伝子をもらえば、光輝く神の御子が産まれる。だから信者は競いように自分の娘を教祖らに喜んで差し出したんじゃないか?シェドとまったく同じやり方だ。信者をなんだと思っているんだ」 滅多なことでは怒らない度会さんが声を荒げた。さいとう幸子さんは養子で、養父母はこころやすらぎの熱心な信者じゃないか、彼も度会さんもそうみていた。 「何が光輝く神の御子だ。俺のことをあいつは駄作だ、失敗作だ、出来損ないだと、散々バカにしていた癖に」 組の一大事にエプロン姿のまま裏口から駆け付けたヤスさん。怒りで震える拳を握り締め、歯を噛み締めた。 樋口さんに腹部を刺された義夫さんはかかりつけ医がいるN総合病院に緊急搬送された。意識不明の重体だ。何の因果か、ハツさんと同じ病院に搬送された。

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