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番外編大山さんと若井さん
「遥琉さん、樋口さんに何があったの?」
「高速に乗った直後、突然口から泡をふいて、苦しみ出したそうだ。詳しいことまでは分からないが、病院に搬送された」
「ここに来るまでの間に何か、毒物を摂取したのかもな。真実はすべて墓場に持っていく。相当の覚悟がなければ出来ないことだ」
彼と地竜さんが腕を前で組み同じタイミングで空を見上げた。
「ついさっきまで雲ひとつない快晴だったのに。これは一雨来そうだ」
二人の声が見事にハモった。しかも同じ台詞を口にする二人。それに気づき、ばつが悪そうに顔を見合わせるとこれまた同時にクスクスと笑い出した。
「私のバックは?手に持っていたと思うんだけど……知らない?」
ハツさんが目を覚ましたと連絡をもらい久弥さんが病院に駆け付けた。ベットに横たわるハツさん。頭や腕に包帯をグルグルと巻いてはいたものの元気そうだった。
「ここにありませんか?」
ベットの隣にある床頭台の棚を開ける久弥さん。空っぽで何も入っていなかった。
「ナースステーションで聞いてきます」
「あら、そう。悪いわね」
「悪くないです。少し待っててください」
久弥さんが病室をあとにしたのち、入れ違いに根岸さんが入ってきた。なぜいるのと言わんばかりに嫌悪感を露にするハツさん。
「なぜいるの?という顔だな。そりゃあ久弥の護衛に決まってるだろ?弓削からの大切な預かりものだ。傷一つ付けるわけにはいかないだろ」
「あら、ずいぶんと過保護なのね」
ハツさんがクスクスと笑った。
「イメージが変わったな。気のせいか?」
根岸さんがぼそりと呟いた。
「何かおっしゃいました?」
「いや、何も言っていない」
根岸さんが頭を振った。
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