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番外編 堪忍袋の緒

「鷲崎と渋川からメールが来た」 宇賀神さんは次期組長に渋川さんを指名したいと本部に報告したけど時期早々と却下され、逆に宇賀神さんの即刻退陣と、槇島さんが一番信頼を寄せている男を次期組長に指名するように迫られた。 「それが嫌なら首を差し出せか。長年九鬼総業に文句も言わず黙って尽くしてきた宇賀神に対して、労いの一言もない。そのうちバチが当たる」 「鷲崎はなんて?」 「福島に行くと騒いで、七海に怒られたみたいだ。あとで覚えておけよと言伝てが来ているぞ」 「久し振りに鷲崎に手ほどきを受けるのも悪くないかもな」 鷲崎さんも素手で闘えるだけの腕を持っていると地竜さんが話していた。 「日々鍛練を怠らないあの姿勢をたまには見習わないとな。鷲崎組に寄ってから帰るとするか」 地竜さんは警察と黒竜とシェドに命を狙われていても常に前向きだった。笑う門には福来ると言って明るく笑っていた。 「ハツさんが義夫にトドメを刺すとか言ってたが、聞き間違いか?」 宋さんが不意にそんなことを彼に聞いた。 「聞き間違いじゃない。久弥が止めようとしたんだが」 そこで一旦言葉を止める彼。 「邪魔しないでとハツさんからナイフを突き出され、ずっと胸の中にしまいこんでいた誉にナイフで脅されたことを思い出したんだろう。過呼吸の発作を起こした。根岸が久弥を介抱している隙にハツさんはいなくなった。伊澤がすぐにあとを追い掛けたんだがどこにもいなかった。集中治療室のドアにはサツが張り付いている。そう簡単には突破出来ないはずだ」 「久弥は大事ないのか?大丈夫なのか?」 宋さんが心配そうに眉を寄せた。 「心配ない」 「なんでこんな時に覃も鞠谷もいないんだ。いや、待てよ」 「どうした?」 「俺が鞠谷になって陣頭指揮を取ればいいんじゃないのか?組事務所に一発撃ち込まれる前に。そうだ、そうしよう。ナイスアイデアだ」 「正気か?」 「俺はいつだって正気だ」 余裕綽々の宋さん。不適な笑みを浮かべた。

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