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番外編堪忍袋の緒

「宋は男にも女にもなれるし言葉の壁もない。うってつけかもな」 紗智さんに買い摘まんで説明し、鞠家さんが普段着ている服を借りて、鞠家さんに変装した宋さん。意気揚々と組事務所に赴いた。彼は若い衆や幹部にあえて説明しなかった。本人と偽者を見分けられる眼力と、観察眼をつけるにはこれくらいしないと駄目だろ、日々鍛練だ、そう言って。 鞠家さんだと信じて疑わず誰も気付かない中「何してんだ、お前は」と言わんばかりにフーさんが宋さんをチラッと横目で見た。 「さすがだなフー。りんりんしか見てないと思っていたが、ちゃんと見てるんだな。恐れ入った」 『バカにするな。それに誉めてもなにもでないぞ』フーさんがプイッとそっぽを向いた。 「なんで分かった?」 『見れば分かる。何年一緒にいたと思っているんだ?』 フーさんがパソコンの前に座り伝票の入力をしていた鳥飼さんの隣に座った。宋さんが二人の真後ろに立ちパソコンの画面を覗き込んだ。 「へぇ~~懐かしいな。フロッピーディスクか」 机の上にあったフロッピーディスクに手を伸ばす宋さん。 「開かずのファイルだ」 「開かずのファイル?どういうことだ?」 「ファイルが破損していて開かない。亜優に手伝ってもらい何度か復旧を試みたが駄目だった」 「安川農園近くの廃屋は宝箱だと誰か言ってたな。もしかしたらそこから出てきたのか?」

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