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番外編堪忍袋の緒
「ここもネットワークカメラを使っているだろ?乗っ取られていないか確認する必要がある。セキュリティを強化する必要がある。それと外にいる構成員全員に防弾チョッキを着せろ。紫竜とヤツの取り巻き連中は神出鬼没だ。いつなんどき襲ってくるかわからない」
普段とまるで違う宋さんに根岸さんと伊澤さんはしばし呆気に取られていた。
「幽霊も怖いけど、幽霊よりもっと怖いのは生きている人間のほうなのかも知れないな」
久弥さんは病院から帰ってくるなり玄関で倒れてしまい、彼がお姫様抱っこして寝室へと運んだ。
「ヤスさん、佐治さん、久弥さんを連れてきてくれてありがとう」
「組事務所の厳つい男たちを見ているより、姐さんを見ていたほうが気が休まるだろうと根岸さんが」
「子どもたちの笑顔を見れば元気になると、伊澤さんに言われて連れてきただけです」
「なのでいちいち礼はいりません。それよりも姐さん、カシラからメールが来てませんか?」
「メールですか?」
ヤスさんに言われて携帯を部屋に置きっぱなしなのにようやく気付いた。
「姐さんに何かあったのではないか、全然返信が来ない。三十分ごとにメールを寄越してくるんです。カシラも弓削と同じで心配症なんですからすぐに返信をしてやってください」
「分かりました」
部屋に急いで戻ろうとしたら、
「ママでんわだよ」
遥香が携帯を持ってひょっこりと顔を出した。幼稚園今日はお昼までだ。
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