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番外編堪忍袋の緒

「お帰り」 「ただいま。おなかすいた」 良かった無事に帰ってきてくれて。忙しい合間を縫って迎えに行ってくれた度会さんと紫さんに感謝だ。 「久弥、どうだ?少しは落ち着いたか?」 「卯月さんと未知さんにまた迷惑を掛けてしまいました」 「迷惑だなんてこれっぽっちも思っていない。だからいちいち気にすんな。今はとにかく寝ろ。体を労ってやれ」 布団をかけ直してあげる彼。 「卯月さんありがとうございます。卯月さんも未知さんも兄ちゃんと同じでやさしい。ここに来て良かった」 嬉し涙を流す久弥さん。 「泣くことないだろ」 彼が困ったように苦笑いしながら髪をぽんぽんと優しく撫でた。 「未知さんは鞠家さんにとって大事なマーなんですよね」 「そうだな。姐さんでなく本当はマー、オヤジでなく本当はバーバと呼びたいみたいだ。それでは若い者に示しがつかないと我慢している。同じ婿の斉木が羨ましいとしょっちゅうぼやいている」 ぷぷっと彼が思い出し笑いを浮かべた。 「鞠家がな、昔からの親友がまさか義理の父親になる日が来るとはこれっぽっちも思わなかった。たまげたと言っていたからな、それを思い出した」 彼と久弥さんの会話は鞠家さんに筒抜けになっていた。 ー思ったより元気で良かった。弓削も心配していたから。声が聞けて安心したー 電話越しでも分かるくらい安堵のため息をつく鞠家さん。

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