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番外編紫竜さん
家に戻ろうとしたときだった。柚原さんが何かに気付き、ウーさんを庇うように一歩前に出て通りの向こう側にある電柱を睨み付けた。
「こそこそ隠れていないで出てきたらどうだ?もしかして日本語が分からないのか?そんな訳ないだろ?」
柚原さんの問い掛けに対し黒い影は微動だにしない。
「気を付けろ。黒竜のメンバーが隠れているぞ。お前らが束になっても敵う相手じゃない。命だけは粗末にするなよ。姐さんを悲しませんな!」
柚原さんが声を荒げた。
ウーさんを門の中に押し込む柚原さん。短く言葉を掛けるとそのまま閉めた。
「ここで会ったら百年目。なんでわざわざ戻ってきた。お前がぞっこん惚れている弓削は生憎不在だ。俺が相手をしてやろうか?」
数分後、電柱の影からふらふらと覚束ない足取りで姿を現したのは顔の印象がだいぶ変わってしまったけれど芫さんだった。
「転んだらどうすんだ!」
電柱に向かい喚き散らす芫さん。もう一人そこに誰かがいるようだった。
それが誰か、柚原さんにはおおよその見当がついていた。芫は酒を飲むと攻撃的になる。人が変わる。弓削さんの言葉を思い出した。
「なんだもう蜜月関係は終わりか?ずいぶんとまぁ早いな。自分のことと目先の欲ばかりしか頭にないから、協力し合うということが分からないんだろう。酔っ払いに何を言っても無駄か」
挑発しないように、当たり障りのない言葉を選びながら芫さんに声を掛ける柚原さん。
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