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番外編 守りたい命
「すぐに振り落とされたが斉木は一瞬の隙をついて、紫竜の脇腹を狙い三角蹴りを繰り出した。伊澤直伝の技だ。ウーと息子を守るために強くなりたいと伊澤に直談判した。急所にヒットし相当痛かったんだろう。紫竜は反撃することも出来ず悶絶しながら窓に逃げた」
どうかみんな無事でいて。祈るような気持ちで覃さんの言葉に耳を傾けた。それはウーさんも同じだった。ウーさんに気付いた覃さんが中国語で二言、三言、大丈夫だ、心配するな。力強く声を掛けた。
福島県K市にあるコンサルティング会社とN総合病院がチャイニーズマフィアの黒竜に急襲され多数の死傷者が出ている模様。テレビにニュース速報のテロップが流れ、緊張が走った。
「ねぇ、橘。菱沼組の組事務所ではなく、なんでコンサルティング会社?」
「表向きはそうなっているからです。ヤクザの組事務所よりコンサルティング会社のほうがいろいろと都合がいいからです」
「なるほどね」
ノンアルコールの缶ビールを呑みながら那和さんがテレビの画面をみつめた。
「紫竜って、滅多なことでは人前に出たことがないだよ。顔を見た人少ないよ。僕も遠くから、後ろ姿しか見たことない。わざわざ日本に来てまで、よほど消したい傷と過去があったんだね。結局紫竜は何がしたかったんだろう」
「私が思うに、狙いは義夫さんではなく、未知さんだったのかも知れません。あの地竜さんを360度変えてしまったのですから。それに覃さんと宋さんも未知さんを気に入ってますからね。未知さんはいわばアキレス腱です」
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