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番外編守りたい命

「こんなのかすり傷です。心配掛けました」 手に包帯を巻いた彼が軽く頭を下げた。 「カルチャーパークの駐車場でたむろして騒いでいた茶髪の若いあんちゃんたちと男たちがトラブルになり、男たちがあんちゃんたちが乗っていたバイクと車に爆竹を投げ、爆発して炎上したみたいです。慶悟の後輩から助けてという電話があったみたいです」 「後輩は?大丈夫なのか?」 「それが男たちに人質にされて連れ去られたらしく、警察が行方を追っています」 「慶悟は?」 「助けに行くと行って聞かず、宋とりんりんが二人がかりで慶悟を説得して、組事務所にいます」 「そうか」 度会さんが険しい表情を浮かべて腕を胸の前で組んだ。 「紫竜はまた必ず仕掛けてくる。まずは腹ごしらえだ。腹が減っては戦が出来ぬからな」 「はい!」一斉に返事をする若い衆たち。 「柚原、ヤス、留守番をしてくれてありがとうな」 列の一番後ろにいた柚原さんとヤスさんのところに真っ直ぐ向かう彼。譲治さんは彼が目の前にいることにまったく気付かなった。空を見上げ煌々と輝く月を眺めるのに夢中だった。 「おぃ、譲治!」 痺れを切らしたヤスさんが注意しようとしたら、 「ヤス、譲治のいいところは物事をよく観察し、集中力があることだ。注意しなくていい」 彼が譲治さんの頭をぽんぽんと優しく撫でた。

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