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番外編守りたい命
「子どもたちをみててくれてありがとうな」
きょとんとして彼をじっと見る譲治さん。
「譲治、これからも頼んだぞ」
譲治さんが嬉しそうににこにこしながら大きく頷いた。
「柚原、子どもたちは?」
「小学生組以外は風呂に入れて寝かし付けました。ひまちゃんはさっき起きたばかりなのです」
「そうか。さすがは柚原だな。未知と橘と紫さんたちにも礼を言わないとな」
度会さんと地竜さんを伴い玄関へと向う彼。そのときヤスさんの携帯が鳴った。
携帯の画面を眺めるだけでなかなか電話に出ようとしないヤスさんに、
「出ないのか?」
彼がそう聞いた。
「で、出ます」
ヤスさんが急いで携帯を耳にあてた。
「誰からだ?」
「出店さんです。出店さんというのは今日はじめて回った地区の町内会長さんのことです。来週も是非来てほしいと。ほしいものをリストアップしてファックスをしたいから連絡先を教えてほしいということでした」
「相変わらずモテモテだな。さすがはお爺ちゃんとお婆ちゃんのアイドル。聞き上手、話し上手のヤスだ」
「オヤジには負けます」
ヤスさんが照れ笑いをしながら頭を掻いた。
「そういえば地区のお婆ちゃんたちと世間話をしていたら、興味深いことを耳にしました。青空が行方不明になった同時期にある一家が忽然と姿を消したそうです。夜逃げでもなく、神隠しにあったように突然いなくなったそうです。妙に引っ掛かるので調べようと思うんですが」
チラっと蜂谷さんを見るヤスさん。
「手伝えってだろ?言わなくても分かってるよ」
まさに以心伝心。言葉にしなくても蜂谷さんにちゃんと伝わっていた。
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