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番外編守りたい命
「頼むからそんな顔をするな。未知にはいつも笑っていて欲しい」
地竜さんの手が僕の手の甲にそっと重なってきて、ぽんぽんと優しく撫でられた。
「あとごめんな。寝なきゃならないのに引き留めたりして。それと我が儘を聞いてくれてありがとう」
「遥琉さんも地竜さんも無事で本当に良かった。僕、心配で……」
安堵したら涙が堰をきったかのように次から次に溢れてきた。同時にこのまま地竜さんがいつものようにふらりといなくなって、もう二度と会うないような、そんな気がして、気づいたら地竜さんの背中におでこをゴツンとねっぱしていた。
「アタタ」
うめき声をあげて背中を捩る地竜さん。
「未知が石頭で頭突きが最強だということをすっかり忘れていたよ。思い出させてくれてありがとう」
(え!?嘘……)
一瞬血の気がさぁーっとひいた。
頭突きした記憶自体まったくなかったから、地竜さんに言われて初めて頭突きしたことに気付いた。
「ごめんなさい」
こういうときは素直に非を認めて謝るのが一番。
「未知からの愛のムチもなかなか悪くない」
地竜さんはとても上機嫌だった。
「あのな地竜、未知はお前がこのままいなくなるんじゃないか、帰ってこないんじゃないか、それが心配なんだよ。それに一太と交わした男の約束。ちゃんと覚えているか?忘れたとは言わせないぞ」
彼が部屋に入ってきたからドキッとした。別にやましいことをしている訳じゃないのに心臓がドキドキした。彼に変に誤解されたんじゃないかと思いヒヤヒヤした。
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