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番外編守りたい命

「忘れる訳ないだろ」 「一太が寝ないで待っているぞ。一太が寝たら戻ってこい。布団を温めて待っててやるから」 僕と陽葵たちの寝顔をちらちらと見たあと「分かった」そう短く答えると一太たちがいる隣の部屋に向かった。 「皮肉なものだな。今回の一件で黒竜《ヘイノン》の他に死神《スーシェン》という名前のチャイニーズマフィアが都市伝説ではなく実際に存在するということが広く認知されたんだからな」 「ねぇ遥琉さん、地竜さんはこれからもずっと命を狙われ続けることになるの?」 「死神自体謎に包まれているから公安やインターポールは躍起になって誰がボスか調べるだろうな」 「調べたければ調べればいい。死神は行き場を失くした若者たちのいわば駆け込み寺みたいなものだ。別にやましいことは何もしていない。未知、ただいま」 地竜さんが嬉しそうに布団に潜り込んできた。 「すまん、一太を泣かしてしまった」 「だから言っちゃこっちゃない」 「お陰で三回も指切りげんまんをさせられてしまった」 彼と地竜さん、今夜も二人に挟まれる格好になってしまった。左手は彼が握ってくれて、右手は地竜さんがそっと握ってくれた。この前みたくいきなり上半身裸になってお互いの身体をペタペタと触り筋肉自慢をまたはじめるんじゃないかとドキドキした。 「心臓の音、すごいな。俺も地竜も怪我をしている。明日も早い。今夜はおとなしく寝るから安心しろ」 「卯月の言う通りだ」 彼にクスクスと笑われてしまった。地竜さんも愉しそうに笑っていた。

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