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番外編 男の約束

「ゴミが」 義夫さんにトドメを刺したのち、紫竜さんは顔に唾を吐き捨てた。 紫竜さんはナイフを引き抜くと返り血を浴びながら同じ集中治療室にいたハツさんのベットに真っ直ぐ向かった。そして顔色ひとつ変えず無言でハツさんの胸にナイフを振り下ろした。 紫竜さんは防犯カメラに銃を向け破壊し、ベットのシーツにライターで火をつけその場から静かに立ち去った。三分もかからなかった。 その場にいた医者や看護師、他の患者には一切見向きもせず終始落ち着いていた紫竜さん。得体の知れない怪物に怖くて誰も近づけなかったと皆、そう口を揃えた。 「おめさんらはよく頑張った。ここさいる救急の患者を守ったべした。だから誰も悪くない」 助けることも出来ずに見殺しにしてしまった。落ち込む同僚一人一人に斉木先生が声を掛け励ました。 斉木先生自身も紫竜さんに肩を撃たれて重傷を負い市内の別の総合病院へ緊急搬送されそのまま入院になった。ウーさんが病院に泊まり込んでつきっきりで斉木先生の看病をしている。陽彩くんは無事だった。ヤスさんら若い衆が交代で病院に様子を見に行ってくれていてその都度斉木先生に陽彩くんの様子をメールで報告している。 「ママ、ままたん!」 「みちさん、ままたん!」 遥香と幸ちゃんが同時に驚いた声を上げた。 「どうしたの二人とも。誰かいた?」 「みて、ママ。チカおねえちゃんがいるよ」 「ねえねといっしょ」 「チカお姉ちゃんが福島にいるわけ……」 目を凝らして二人が指を指した先を見ると、チカお姉ちゃんが本当にいたから腰を抜かすくらいビックリした。

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