3201 / 3632

番外編男の約束

警察が捜査に支障をきたすからとマスコミ各社に報道を自粛するように依頼したものの、病院襲撃の動画がネットにあげられあっという間に拡散されてしまった。斉木先生はたった一人でテロリストに立ち向かい母子と病院を守ったヒーローとして大々的に取り上げられ称賛された。 今までその存在も、顔も、何もかもが謎に包まれた男だった紫竜さんの顔がネットで暴露され、警察からは全国に指名手配されすっかり雲隠れしてしまった。 目的を遂行し、早々と大陸に渡ったのではないかという人もいる。 油断は禁物と、蜂谷さんと伊澤さんがマラソン会場をパトロールしている。彼も子どもたちを守るために会場にいる。 スタートのピストルの音が鳴り響き一斉に走り出す選手たち。なかほどにいた一太と地竜さんも襷を握りしめて走り出した。どんな困難な状況でも子どもたちの弾けるような笑顔が場を和ませてくれる。緊張の糸を解してくれるから不思議だ。 このまま何事もなくゴールに向かってほしい。両手を握り締め、橘さんと一緒に固唾を飲んで見守った。 ダムから吹いてくる心地いい風が頬を撫でる。沿道の声援を受けながら笑顔で走る一太。地竜さんも楽しそうだった。黒竜がいつまた襲ってくるか分からない緊迫した状態が続き外出もままならず練習する時間がほとんどなかった。ぶっつけ本番とは思えないほど二人の息はぴったりと合っていた。 前を走っていた親子連れにアクシデントが起き、一太たちも巻き込まれ転びそうになったけど地竜さんが一太、飛べ!と声を掛けて寸でのところでぎりぎり回避した。

ともだちにシェアしよう!