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番外編男の約束

ちょうどこの時、駐車場でちょっとした騒ぎが起きていたんだと、あとから彼に聞いた。 まさかそんなことが起きていたなんて。全然知らなかった僕たちは二年生がスタートするのを今か今かと待っていた。 奏音くんと根岸さん、めぐみちゃんとチカちゃん、優輝くんと信孝さん。六人仲良くスタート地点に立った。遠くからでもかなり目立つ六人組。迫力も、近寄るな危険のオーラ半端ない。スタートのピストルが鳴るころには他の参加者が自然と半歩後ろに下がり、なるべく関わらないように離れて、極力目を合わせないようにしていた。 「今ごろ縣一家は上を下への大騒ぎですね」 「そうですね」 「めぐみちゃんと優輝くんが頑張っている姿をリアルタイムじゃなくてもいいから見てほしいかった」 ごめん、仕事だから。見ている暇ない。めぐみちゃんと優輝くんがドキドキしながら柚さんに電話を掛けたら素っ気なく言われ一方的に電話を切られてしまった。 「ねぇ、ママ。チカおねえちゃんはやいよ」 「ねぎさんも。おじさんも」 「そうだね」 遥香と幸ちゃんは真剣な眼差しで画面に釘付けになっていた。 そういえば昨夜こんなことがあった。 「年も年なんだ。何かあったらどうする?」 「何もないさ」 「これ以上、心配事を増やさんでくれ」 「なんだ心配してくれるのか?」 「当たり前だろ。一応、なぁ」 「一応なんだ?」 「う、うるさいな。俺に言わせるな」 ぷいっとそっぽを向く伊澤さん。 根岸さんはマラソン大会に参加することを前日の夜まで伊澤さんに黙っていた。

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