3204 / 3632

番外編男の約束

「またけんかしてる」 「なかよしだから、けんかをするってパパ言ってた。きらいだったら一言もしゃべらないって」 「そっか、なるほどね」 一太と奏音くんに的を得たことを言われ、苦虫を噛み潰したような表情になっていた。 「若い者にはまだまだ負けない。根岸さんはまさに有言実行ですね。チカさんも意外と負けず嫌いですからね」 一位と二位を競う奏音くんとめぐみちゃんたちとは違い優輝くんはいたってマイペースそのものだった。マラソン大会に参加したくても一央さんや柚さんが忙しそうでなかなか言い出せず今まで一度も参加したことがなかったみたいで、信孝さんと一緒に走れるのがすごく嬉しいのか終始にこにこしていた。 同タイムでゴールテープを切った四人。遅れること五分。優輝くんと信孝さんも一緒にゴールをした。待っていた一太たちと順にハイタッチをする優輝くん。運動がとにかく苦手で出掛ける前に大丈夫かな?完走できるかな?と不安を口にしていたけど、無事に完走することが出来て満足そうな笑顔を見せていた。諦めずに最後までやればできる。自信に繋がったと思う。 遥香も幸ちゃんも「良かったね」「うん。よかった」と一安心していた。 ー 一旦、切るぞー 彼の声が聞こえてきた。 ー文句はあとで聞くから紙にでも書いておいてくれー 遼お兄ちゃんたちへ伝えると画面がもとの待受画面に変わった。 何気に視線を感じて下を見ると太惺と心望が下唇をこれでもかと伸ばしていた。寝起きだから二人ともよけいに機嫌が悪かった。 「ごめんね。見たかったよね?ちょっと待っててね」 「たいくん、ここちゃんねぇねっておいで」 「みゆねぇねとまってよ」 遥香と幸ちゃんが両手を広げた。 「ほら二人とも」 橘さんが太惺を抱っこし遥香の膝の上に、心望を幸ちゃんの膝の上に移動した。

ともだちにシェアしよう!