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番外編コウジさんの後輩

玲士さんを軽トラでK駅まで迎えに行き、マラソン大会の現場まで送っていってくれた若い男性はコウジさんの後輩のひとだった。鼻と耳にピアスをいくつもつけていてグレーのつなぎを着ていた。 「磐越東線は一時間に一本しかないならそれじゃあ全然間に合わない。だからにぃぱっぱをかっ飛ばした。軽トラを舐めんじゃねぇぞ」 「舐めてはいない。助かったよ。過足(よぎあし)さんだっけ?」 「はい。過足です。呼び捨てでいいです」 腰を九の字に曲げる男性。 「でもまさかヤスが先日回った地区に住んでいるとは思わなかった」 「オレもコウジ先輩のダチであるヤスさんがまさか来るとは思わなくて。ちょうどオレ野菜を出すのに直売所にいたんで留守しててスンマセンでした。あとでコウジさんからなんで挨拶しねぇんだってみっちり怒られて、話しを聞いてマジで血の気が引きました」 過足さんがため息をつきながら頭を掻いた。 「野暮なことを聞くようだが、コウジの後輩ってことはそのつまり……」 「はい。関連竜虎会の元メンバーです。親に捨てられたオレを育ててくれたじいちゃんとばあちゃんをこれ以上泣かせなとコウジ先輩に言われました。いつまでも若いという訳じゃない。意気がってないでじいちゃんばあちゃん孝行をしろ。死んでからは遅いと諭されました。関連竜虎会が解散する半年前に福島に戻り、農家をしているじいちゃんとばあちゃんの手伝いをはじめたんです」 「そうだったんだ」 「ヤスさんがコウジ先輩のマブダチならオレにとってもヤスさんはマブダチです」 固かった過足さんの表情が彼といろいろ話すうちすこしだけ和らいだように見えた。

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