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番外編コウジさんの後輩
紗智さんと那和さんを真ん中に和気あいあい賑やかにぎょうざとしゅうまいを作る子どもたちを目を細めて眺める大人たち。太惺と心望はみんなにかわりばんこに抱っこしてもらい、いじくりこんにゃくにされ、キャキャとはしゃいでいた。
ウーさんとフーさんも故郷の味を子どもたちに食べさせたいと台所に立ち橘さんと柚原さんと四人で何かを作っていた。
そんな時だった。オヤジ事件ですと外の警備をしていた佐治さんが険しい表情で居間に入ってきたのは。
「元衆議院議員の福光礼が何者かに撃たれたと、ついさっきラジオで速報が流れた」
まさかそんなことになっているとは露知らず。ナオさんと信孝さんは、晴くんと未来くんと四人でぎょうざの具を皮で包んでいた。
「信孝、ちょっといいか」
彼が手招きすると、
「翔さんから着信があったのはそのことだったんだ」
心配そうにナオさんをそっと見た。
「福光の家とはすでに絶縁しているからもう赤の他人だ。とはいえ兄には代わりない。伝えるべきなんだろうな。朝起きてニュースを見て初めて知ったとき、まわりはみんな知ってて、自分だけ知らなかったというのが分かったときどれほど厭な思いをするか。分かったよ、ナオには頃合いを見て話すよ」
「頼むな」
信孝さんの肩をぽんぽんと軽く叩く彼。何事もなかったように信孝さんは家族のもとへ戻っていった。
「何かあったの?」
椅子に座るナオさんが聞くと、
「晴と未来が寝静まったら話すよ」
「うん、分かった」
一瞬顔色を曇らせるナオさん。長年信孝さんに寄り添っているんだもの。いつもとは違う信孝さんの様子に直感的に何かを感じ取ったのかもしれない。「もしかして……」と言いかけて、「ううん、何でもない」と慌てて首を横に振った。
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